登場人物紹介
僕:数学が好きな高校生。
テトラちゃん:僕の後輩。 好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。言葉が大好き。
テトラ「ところで先輩。そもそもの質問で申し訳ないんですが——」
僕「テトラちゃんの質問は『そもそも』が似合うよね」
テトラ「はい?」
僕「テトラちゃんの質問は、根源的なものが多いから」
テトラ「す、すみません。いつも話を振り出しに戻すみたいな質問ばかりで……」
僕「いやいや、とんでもない。 僕はテトラちゃんの質問から学んでいるような気がするんだ。 で、質問って?」
テトラ「あのですね、やっぱりあたしは『どうしてベクトルというものを考えるのか』が気になっています。 先輩のお話で、ベクトルを使うと図形の問題も計算に持ち込めるというお話はありましたけれど(第435回参照)」
僕「うん。 もちろん問題によるけど、 図形的な問題を解く手がかりを得られる点はあると思う。 補助線を発見できないときでも、とっかかりを見つけられるみたいに」
テトラ「確かにそうなんですけど、 でも計算で《腕力》が必要になったりします。 また、どのベクトルに注目するかにもよるので、 結局は何かを見つける必要はありそうに感じました」
僕「うんうん。それは僕もそう思う。だからベクトルを考えればすべてが解決するみたいな万能薬じゃないのは確か。 新しい視点で考えられるというのはあるかもしれないけど……」
テトラ「わかります。ベクトルで考えているときは、別の頭を使っているような気がします」
僕「そういえば、ベクトルを使う問題で、簡単だけどおもしろいものを思い出したよ。 ベクトルを使って考える意味が少しわかるかも」
テトラ「ベクトルを使って考える意味! それは何ですか?」
僕「それを説明する前に、簡単な問題を解いてみない?」
テトラ「もちろんですっ!」
僕「こういう問題だよ」
問題1
四点
テトラ「問題文が短いので、私でも解けそうです」
僕「いやいや、問題文の長さで問題の難しさを判定するのは危険だと思うよ。 あ、ごめんごめん。考えの邪魔しちゃいけないね」
テトラ「はい、大丈夫です。
まずは、図形問題のセオリー通りに進むことにします。
ポリア先生の《図をかけ》ですね。ええと——四点
テトラちゃんの図
僕「……」
テトラ「はい、矢印で台形ができました。 あっ、じゃないじゃない。 台形とは限りません。台形は向かい合うひと組の辺が平行じゃなくちゃいけません。 これは、ただの四角形です」
僕「うん、そう。問題文には、四点に対する条件がまったくついてないから」
テトラ「それで《求めるものは何か》といえば、
僕「おお、学んだことをさっそく応用!」
テトラ「点
僕「《一つの点を基準にする》というベクトルの考え方を試して、見事に解決。お見事!
いまは
テトラ「あ、そうなんですか!
勝手な点
勝手な点
僕「そうそう」
テトラ「先ほどと同じように、計算してみます!
点
僕「そうだね」
テトラちゃんは書いたものをしばらく眺めていた。
テトラ「先輩……点
僕「いまテトラちゃんが言ってくれた通りなんだけど、
勝手な点
テトラ「はいはい、よくわかります」
僕「いまのはテトラちゃんの証明を逆にたどっただけだけど、 こんなふうに考えることもできるよ。 テトラちゃんが最初に描いた図を見る」
テトラちゃんの図(再掲)
テトラ「はい。問題文を見ながら描いたものです」
僕「この図で、
ぐるっと一回り
テトラ「言われてみれば、その通りです……あの、でも、先輩? これは、はじめからベクトルの問題ですから、 ベクトルのいろんな使い方ができるというのは、 当たり前のような気がします。 《ベクトルを使う意味》の話から、ちょっとズレちゃいましたよね」
僕「いやいや、実は、ベクトルを使う意味の話はここからなんだ」
テトラ「はい?」
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